第9章
スクイレルボム
観光から帰った私たちが向かったのは、
下流から2番目のポイントでした。
連日フレッシュが上がってきている場所
先生が下流のポイントへ入り
私は上流へ!
先生の後にあるかごの中には
1mを優に超すサーモンがいくつも入れられていた。
大型の個体は、かごに入れられ採卵し
大型の遺伝子を持つサーモンを増やす方針のようです。
驚くほど大きなサーモンが入っています。
このポイントは、私の立っている場所が
中州のようになっており浅く
その両サイドは深くなっていた
そして、直ぐ下流では
その深みが重なり
かなり深くなっている。
どう見てもここしかない
そう思えるポイントだった!
そこで、今まで通り、フローティングラインベースにシンキングタイプ2のティップを使用し、ガイドのお薦めのチューブフライで釣り下っていった。
これまでの釣りを復習しながら、丁寧に釣っていく。
かなり上流から、深くなり、釣り下れなくなるまで釣っていった。
1時間半くらい釣っていたのですが、全く気配がない。
ジャンプもなければ、もじりもない。
ここに魚はいるのだろうか?
上流から釣り下ってきて、思った事は
この合流部分でかなり深くなっていて、それ以外は、たいして深くない事。
この急激に深くなった部分だが、フローティングラインのベースで探れているのだろうか?
アトランティックが、川底を好む魚ではなく、中層に浮いて定位している魚だったらこれでよいのだろうが・・・・・
本当にこのラインでよいのか?
何もないために不安に感じ、いろいろな事が考えられた。
そこで、
現地のセオリー通りやってみた結果、無反応だったのだから、
今度は他の方法を試すべきと思い、釣り方を変える事にした。
サクラマスで覚えた、トライアングルリトリーブのスタイルを行うのだ!
まずは、ラインを交換する。
使用したラインは、 パワーヘッド2 タイプ2フルシンク
フライは、前日にチェリーボムで釣れたのだから、スクイレルボムならば、間違いないだろう!と、
九頭竜で数多くのサクラマスをヒットさせてきた、スクイレルボムを使用した。
上流の、浅い部分から丁寧に川底ギリギリにフライを泳がし、ゆっくりと誘って喰わせるスタイルの釣りです。
このボックスのフライは、
全て使用してきたフライばかり。
この中でも一番釣れそうなサイズ&カラーを選んだ。
タイプ2のシンキングラインでの釣りは、得意中の得意だ!
これで、九頭竜からロシア、アラスカ、カナダ、ニュージーランドまで幾度となく釣りをしてきた。
数多くの実績があり豊富な経験もある。
久々のシンキングラインの釣りに胸をおどらせた。
キャストして直ぐ、ラインがそこに当たっている感触が伝わり、直ぐさま川の水深が感じ取られた。
これだ!
いつものこれだ!
この感触!
この時キャストしたポイントには、魚が付かない事が直ぐに解った。
少し急いで下ろう・・・・
キャストして、ラインを沈ませ、底流れにラインを入れる。
それ以上沈まないようにテンションを掛け、水深を安定させる。
スイング、魚に見せる、追わせる、それからの誘い!
この動作を、1キャスト事、繰り返して釣り下っていった。
良い感じだ!
スイングスピードも最高だ!
サクラマスならここで間違いなくヒットしてくる!
体に染みついたこの感触!
これだ!この感じだ!
釣りをしていて、最高の気分だった。
そう気持ちよくトライアングルリトリーブをしていると、
フライは根掛かりをしてしまった。
反射的にフッキングをしたが、止まったまま。
川底に引っかかった。
その直後、
強烈な振りの動きが伝わってきた!
根掛かりではない!生きている!
デカイ!これはデカイ!
1回の振りが大きく重いのです。
この振りの大きさで魚のサイズは解る!
まちがいなくデカイ!
とんでもなくデカイ!
こんな感覚は初めてだった!
過去にない大きさだ!
メチャメチャに緊張した!
振りの動きが終わったと思ったら、一気に走る!
しかし、その動きにレインボーのようなシャープさはない
ズシリと重く一気に対岸へ走っていく!
その直後
イレギュラーな動きをしたと思った瞬間
「ドバーン!」
全身を空中に出し、宙返りをしてジャンプ!
見た事もない大きさにびっくり!
「silly!silly!デカイ!デカイ!おーい!」大声を出しガイドを呼んだ!
sillyは観光の疲れか、車で寝ていた。
そして、下流に走ったかと思えば、上流へ走りまたもやジャンプ!!
「silly!silly!おーい!」
大声を張り上げている私に、ようやく気が付き、カメラを持って走ってきた!
この魚、合計で5回もジャンプしたのです!
「silly! its very Big fish !」
sillyはこの魚を見て
「Maybe Ten Kilogram Over」
10kgオーバーと言っていた。
デカイ!
とんでもなくデカイ!
とうとうやっちゃった!
とんでもないものをヒットさせてしまった!
しかし、全く弱る気配がないのです!
浅瀬に引き上げようとしますが
全く寄ってこない!
ちょっとやそっとの力では、動かなく
思うように誘導出来ないのです。
5回もジャンプしながら
強引に寄せようとすると大暴れ!
頭を振る動きが大きく
ロッドが引き込まれてしまう!
何分が経ったのだろうか?
自分では30分以上もやりとりをしている気分だった!
ゆっくり寄せてきて、浅瀬でランディング!
何度も、寄せてきては走られての繰り返しだった。
ここまでファイトしたら、これはバレないだろうと思った。
このまま体力を消耗させ、じっくりやれば、必ず取れるから、慌てず、慎重にファイトした。
すると、
だんだんと魚が水面に浮きだし、背びれが見え、尾びれも出すようになってきた。
デカイ!
それにしてもデカイ!
水面に浮いた魚を見て、つくづく思った。
もう間違いないだろうと、
ひざくらいの水深まで魚を寄せた時、
少しいやがって暴れ、軽く頭を左右に振った。
その瞬間、
フッ・・・と、ロッドのテンションは消えた・・・・
ラインが宙を舞い飛んできた。
えっ?
ウソだろう?
なぜ?
え〜〜!
ガックリ来た私は、笑うしかなかった。
顔は引きつった!
「うそ〜〜っ!」
この後、動けなくなってしまった。
指は震え、気が動転した。
え〜〜っ!
「Why」
「Why」「Why」
「Why」「Why」「Why」・・・・・・・
sillyがフライを見たいというので、渡したら、
「Wao ! ・・・Wat a single hook used? Why?」
頭を抱え、顔を振っていた・・・・・
これがそのフライです。
ちょっと針先が丸くなっていたこのフック
だが
それが原因とは思えない。
もし刺さりが悪いのが原因ならば、ジャンプ1回目でバレていたはずなのです。
5回ものジャンプ!
水面で反転し暴れたのも何度会った事か。
20分以上はファイトしていた。
掛かりが甘いならば、その時に外れていたはず。
フックがしっかりと刺さっていた事に間違いはない!
これが、サクラマスならばいつか取れていたであろう。
シルバーサーモンでも同様だ。
サクラマスはは、大きくても4〜5kg
シルバーサーモンは大きくても7kg
10キロ以上ともなると、フックに掛かってくる負荷が違う。
掛かりどころが良ければ、シングルフックでも問題はなかったのであろう。
私が思うには、これだけのファイトをして
その後に、軽く顔を振っただけで外れてしまうという事は
フックの傷が大きく広がり
ユルユルになっていたとしか考えられない。
魚が小さければ問題はないが
大きければ大きいほどファイトに時間は掛かり
傷口に掛かる負荷は大きい
よって、傷口は広がりやすいのだ。
Tompsonで釣り上げたスティールヘッドは、1/0のシングルフックでキャッチ出来た。
口の堅い部分に刺さっており、キャッチ後、フックを触ったら簡単に外れたことを覚えている。
この時以来の大きさだった。
それ以上にも感じた。
かなり落ち込んでいた私ですが、
ロッジに帰り、ベッドの中で目をつむると何度も何度もまぶたの裏に、あの強烈なジャンプシーンが浮かび上がってくる。
今だこそ言えるが、
この時、あのサーモンは釣れなくて良かったのであろう。
もし釣り上げていたら、それ以降もシングルフックを使用していたかもしれない。
なぜに、アトランティックサーモンを釣る時にダブルフックやトリプルフックを使用するのか?
それは、この大きさがあるからではないでしょうか?
サクラマスのような小型のサーモンでは不要で、
シルバーサーモンにしてもそう!
各ビートに設置してある生け簀には、1mを優に超える魚がいくつも入っていた。
このサイズ、決して珍しいサイズではなさそうなのです。
私たちがここに来る4日ほど前、sillyも10Kg以上のサーモンを釣り、生け簀に入れたという。
チャンスはまだある!
ロッジに帰ってから
ダブルフックにウエイトを入れ
いくつもスクイレルボムを作った!
次ぎのチャンスは、
絶対に逃さないためにも!
第10章へ続く
ただ今執筆中!