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Atlantic Salmon
アトランティックサーモン


ーー 第7章 ーー

サクラマスFLY チェーリーボム

 

 

この日の釣りは、

ロッジ前でのビートから始まった。

 

 “思い出のジャケット”を着て!

 

 

この場所は、ここ数日釣れていなく、サーモンの少ないポイントなのです。

しかし、

サーモンは遡上魚

単独で遡上しているのもいて、

可能性はあるとガイドは言う。

何処が着き場なのか?

フラットな流れは、水面の状況では地形が読み取れず、フライをキャストしながら釣り下らないと解らない。

思ったよりも浅く、魚は警戒をしやすい難しいポイントだった。

丁寧に、下流の川が分岐する瀬まで、何度も釣りましたが全く無反応でした。

前日爆釣したフライも不発!

全く気配がないのです。

入ってきていないのか?・・・・

 

そこで、

ガイドのすすめもあり、このビートを早々に切り上げ

次のビートへ移動し、自分たちが入れる時間まで待つことにしました。

 

午前中の 2箇所目のビートは、滝下のポイント!

巨大な美しい滝があり

この滝に行く手を阻まれたサーモンが集まる有名なポイントなのです。

 

滝の左側には、魚道が造られ、そこをサーモンは遡上していく。

私たちが行った時は、

まだ、前の方達が、このビートを釣っていた!

「彼らの釣りを見て、待とう」

そうガイドは言い、何処が魚の着き場なのか見学をしていた。

2名の釣り人が入っていて、釣っていたのは、中間部分と、最下流のポイント。

滝下は誰も釣っていなく、魚が居ないのか?それとも流れが悪く釣りにくいのか?

中間部から下流をこまめに釣っていたのです。

少し立ち込み、#8くらいのラインに見えましたが、ダブルスペイでキャストしていました。

水深は思ったより浅く、最深部でも2mくらいなのでは?と思われるほど浅い。

ラインは、シンクティップ・タイプ2ティップでベストだろう。

そこで、時間が来て、私たちが釣りをする順番になったのですが、

まず、浜野先生が滝下へ入り、私は中間部分より入ったのです。

 

その直後、先生がヒット!

「来たぞ〜!」

大声で叫ぶ先生!

その後連発でヒット!

 

どうやら先生は、通常のダウンの釣りではなく、アップストリームで、上流の滝のしら泡の中にキャストして釣っていた。

赤い小さなフライを、 ニンフフィッシングをしているように、上流へキャストし、余ったラインをたぐり寄せていく。するとラインが止まりヒットしてくるのだという。

このしら泡の下には、遡上して行く手を阻まれたサーモンが沢山潜んでいるようなのです。

私は、1キャスト2ステップダウンで釣り下る。

しかし、全く気配がないのです。

 

そこへ

「ヨシ!来たぞ! 上流だよ!アップの釣りだ!!」

先生の大声が聞こえてきた。

 

どうしよう?・・・・

私もニンフのような釣り方をするべきか、このままのスタイルで釣るべきか迷った。

 

そこで、私が選んだ選択は、このまま釣り下る事でした。

 

1歩1歩釣り下って丁寧に探っていくのだが、全く何もない。

無反応。

魚の気配すら感じないのです。

 

このビートで釣りをする時間は限られている。

 

先生の所へ行けば釣れるのだろうか?・・・・・・・どうしよう?

 

もう少し釣ってダメならば、先生の所へ行こう!

そう決め、どんどん釣り下って行った。

ガイドは、ここから下流の方がベストなポイントと言い、ゆっくりと釣り下れと言うのです。

 

さらに釣り下って行ったが、全く無反応!

先生のヒット!と騒ぐ声もしばらく聞こえなくなってしまっていた。

どうしよう?

諦めて先生の場所へ行こうかな?・・・・

でも、先生がさんざんやった後で、もう釣れる魚が居なかったら・・・・・・

どうしよう?

そうこう考えて釣り下って行くうちに、残り時間は30分を切っていた。

ヤバイ!

このままだと、ボーズになってしまう。

 

いまさら戻ったとしても、この距離!

滝下まではかなりの距離だ!

 

もう時間はない。

ここで何とかしなくては!・・・・・

 

ガイドのsillyも一生懸命で、次々にフライを交換させる。

「これがダメなら、これを・・・・」

でも、全く無反応だったのです。

 

sillyは、「時間がないから少し急いで下り、最下流のポイントへ入れ」と言う。

 

急いで下って行くと、最下流のポイントでは、

ジャンプがあり、背中を水面に出すサーモンの姿がいくつも見えたのです。

 

ここならば釣れるであろう!

期待に胸がふくらんだ!

 

 

魚がジャンプした辺りを集中して狙い、キャストした!

しかし、無反応なのです。

その前後を、数頭キャストしても、無反応なのです。

なぜ?

そこで、sillyは、「今度は、こんな小さなフライを使用してみるか?」

次々に試していくが、どれもダメなのです。

どうしよう・・・・・・・もう時間がない。

どうしよう?どうしよう?・・・・・・・

 

いくつフライを交換しただろうか?

 

彼の勧めた大型のストリーマをキャストした。すると、一瞬だが、川底が触ったような、何かの感触があった。

魚か?何だ?・・・・・・

 

慌ててもう一度同じようにキャストするが、全くの反応なのです。

魚だったのか?・・・・・・

なぜ釣れない?なぜ?なぜ?・・・・

もう終わりだ。時間がない!

これで最後の1投をして帰るのか?・・・・

時間のない事の焦り。

この焦りが何かを狂わせていた。

 

「ラストキャスト!」 気合いを込めてキャストした。

フライは何事もなくスイングして、帰ってきてしまう。

もう5分しかない。

車まで戻る時間を考えたら、もう終了の時刻。

しかし、諦めきれなかった。

 

先生は滝下で釣っているし・・・・・・私も釣りたい!

この一心でした。

「ラストキャストをしても良いか?」sillyに聞くと、OKのサインが出た。

これで最後、

ラストチャンスなのです。

そこで、sillyが、フライを出し、このフライの中から自分の好きなのを選べというのです。

 

 

これは、サクラマス用に開発されたフライ

CherryBomb orange

このフライで数多くのサクラマスを手にしてきた。

そこで、私が選んだのは、

この、チェリーボムorangeによく似た雰囲気のフライでした。

 

ラストチャンス!

最後の1投! このフライに賭けよう!

これで、ダメならば諦めて帰ろう。

そう思いながら、完璧なキャスティングを行えるよう、神経を集中してキャストした!

 

フライは着水し、スイングしていく。

いままで通り。

やはり、何もない・・・・

もうダメだね。

やはり、

今日はダメな日なんだ・・・・・・

 

諦めきれない自分に、言い聞かせるようにつぶやいた直後だった。

 

「ドスン」とロッドに重みが掛かり、

「ズンズン」とサーモンが頭を振る動きが伝わってきた!

 

「来たー!」

「ヨッシャー!」

 

これ、ウソじゃないよね。

ドラマみたいな、話し。

この日は、完璧にに諦めていたのですが、神様は居ました。

見捨てられていなかったのです。

救ってくださったのです!

 

信じられない思いでした。

喜びに胸がいっぱいになった瞬間、

ここまで上手くいく事はないから、ここでバレてしまうのでは?

そんな不安が心をよぎり、かなり慎重になってしまいました。

 

それがまた、強烈に走るのです。

「諦めて、よってきてくれ!」

「バレないように・・・」

「ウワー!飛ぶな!」

「なんでも良いから、早く寄ってきてくれ〜」

ムチャクチャに走り

ムチャクチャに暴れるのです!

 

ここまでしてもバレないならば、

大丈夫だろうと安心して、ランディング。

 

この強烈な暴れ方に感心しました!

ホッと一息!

心から笑みがこぼれました。

 

アトランティックサーモンは、

ハイパワーな魚です。

サクラマスでの経験を生かし

選んだフライで、

最後の最後でヒット!

ラッキーです!

 

「サクラマスと同じようなフライで釣れるんだな!」というのがこの時の印象でした。

ならば、

CherryBombを試してみれば良かったとも思いましたが、

釣れない時って

それどころではないのですよね。

 

ガイドの勧めるフライを使用するのが精一杯なのです。

他のフライを試せる余裕なんて全くないのです。

まずは1匹釣り上げ、その日、そのビートでのボーズを免れたい!それが先決で、

その次にこんなフライはどうだろうか?と余裕が生まれる。

先生はヒットすると大声を出し大騒ぎする。

それが釣れていない時にはかなりのプレッシャーになり「私も釣りたい!」という思いを増幅させるのです。

「釣れて良かった!」しかも、CherryBombカラーのフライで! ラストチャンス、ラストキャスト!

こんな事って本当にあるのだな〜って感激しました。

 

 

昼食後

午後から向かったビートは、

バックスペースが全く取れない場所。

急深で、立ち込みも出来ない。

しかも、下流に向き右岸側

右利きの人には、とてもキャストしにくい場所です。

 

クイックスピンキャストで

ラインを右前に置き

ラインを回転させシュート!

この方法以外、ロングキャストは不可能な場所なのです。

普通は、ダブルスペイでキャストする。

しかし、バックスペースがないから、Dループを小さく作らなければならなく、結局飛距離が出ない。

ガイドは、私が行う

クイックスピンのキャスティング驚いていた。

先生も下流まで釣り、全く気配がないために休憩。

私も、一度釣り下ったのですが、

再度、チャレンジです!

いろいろ試したいからなのです。

少し上流から

午前の経験から、今度はダブルフックにタイイングしたチェリーボム・ブラックで釣り下る事にしたのです。

お昼休憩時、早々に食事を済ませタイイング

この日までのイメージをアレンジに入れた

チェリーボム・ブラックをタイイングしました。

浜野先生が赤い小型のフライを使用し

滝下で爆釣していた事より

ブラックのチェリーボムにワンポイントのレッドを付け加えたパターンです。

 

このフライにチェンジして

再度、釣り下って行ったのです。

すると、

「ズシッ!」

「ズンズンズン・・・」

先ほど全く気配がなかった場所を

このフライで釣っていくと

ヒットしてきたのです!

 

自分のフライで!

先ほどタイイングしたフライで!

ヒットです!

それがけっこう大きく

なかなか寄ってきません!

sillyも慌ててネットを持ってきて、大騒ぎ!

 

かなり長いやりとりが続きました!

ネットに入れたために

ウロコは剥がれ、少しボロボロに見えますが

凄かったです!

強烈でした!
立派な太った雄のサーモンでした!

口の中には

チェリーボムがしっかりと刺さっていました!

嬉しかったです!

このフライで釣れた事。それが一番嬉しかったです!

その釣り方も、サクラマスの釣りで培ってきた釣り方と同様なフライの流し方をしました。

ベストな位置で、ベストな、イメージ通りにヒットした事に大感激でした!

直ぐさま

同じフライで、

同じように、

サクラマスの釣り方を思い出しながら

釣り下って行ったのです。

すると、またまたヒット!

サクラマスの誘い方と同様です。

違いはラインだけなのです。

この釣り方で、アトランティックも釣れる事に大感激!

 

サイズは先ほどより小型でしたが

メスの美しい鮭でした。

 

 

セオリー通りの位置にフライはフッキングしており、右側から釣り、追い食いして反転した事が解る。

最高のフッキング状態でした。

あっという間に3時間は過ぎ

次のビートへ!

このポイントでは、sillyがシークレットにしている釣り方を教えてくれると言い、

対岸ギリギリフライをキャストして、

その、誘い方を説明してくれた。

それが、なんと!

九頭竜での、流心をまたいで対岸のテトラ側を釣る時の方法と全く同様!

これには驚きました!

この釣り方は得意中の得意!

少し上流から釣り始め、

最高のポイントに指し掛かった時

モゾモゾと感じるアタリが来た!

「ヒットです!」

この魚も強烈に走りました!

アトランティックサーモンはとにかく飛ぶ!走る!

 

ようやく落ち着いたサーモン。

この釣り方には驚きました!

まったく同じなのです。

 

私は、九頭竜川で釣れなかった長い期間、

釣れる方法を探して、試行錯誤してきた。

その結果、偶然にも釣れた方法をヒントに、繰り返し行い、こういう場所にはこの方法が有効である。と言う事を経験の上で、覚えてきた。

誰に教わる事もなく、全て経験から得たものばかり。

独自の方法で釣りをしてきた。

そこで、

全く見知らぬこのアトランティックサーモンの世界で、自分が考えた方法と全く同じ方法を

ガイドがシークレットな釣り方として教えてくれたことが、ムチャクチャに嬉しく感動した!

サクラマスとは違う魚ですが

同じ釣り方をする部分もある事。

今まで自分が行ってきた事が、他にも通用した事に感激した。

 

この日の朝は不調から始まったが、

サクラマスを釣ってきた経験やそのパターンに、今回は助けられ、結果として、かなり良い釣りが出来ました。

 


この、ジャケットが助けてくれたのかも?

 

 

釣りは経験が命。

ただ闇雲に釣るのではなく、考えて、後から応用が出来るように、自分の行動を把握しながら釣っていく事が大切なのです。

何気なく、何となくでは、自分がどういう行動をして釣ったのか、解らなくなってしまいます。

今回の釣りも、大きな経験を積みました。そして、大きな自信も付きました。

 

 

シングルフックのチェリーボム ブラックをダブルフックにタイイングした今回のパターン。

このことをきっかけに、この日から連日タイイングをした!

 

 

第7章 スクイレルボムへ続く!