「杉坂研治のFieldNote in Akan ユスリカ編」  

スパークリング スティルボーン フライ

 

・阿寒湖の魅力    (2001年執筆  2009年追筆)

 

6月半ばから後半に掛けてモンカゲロウがスーパーハッチする阿寒湖。

見やすい大型のフライを50cmオーバーの巨大なアメマスが、ゆっくりとフライを吸い込んでいくシーンを目の当たりにできる醍醐味は、フライフィッシャーマンを魅了してやまない。

 私も以前この状況に出会い、阿寒湖に魅了されてしまった一人である。しかし、ここ近年はモンカゲロウがハッチするこの時期に、毎年ロシアへ遠征をしていて、そのスーパーハッチを見ることができなくなってしまっている。

あのスーパーライズそして巨大なアメマスが生息する状況に魅せられた私は、2年前(1999年)のことになるが、エメラルドの支配人に「モンカゲロウのハッチする時期以外はどうですか?」と問い合わせてみた。

 すると、5月中旬から6月上旬に掛けて巨大なユスリカがハッチし、しかも半端な数では無く、条件のそろった風が吹けば、湖面上のユスリカが風で集まり、幅5m長さ100mもの帯状にユスリカが折り重なり、海のなぶら状態でアメマスがライズすること。さらには、モンカゲロウのハッチが終わる頃から7月の初旬にかけて、オレンジ色のボディを持つ#10サイズのカゲロウがスパー・ハッチする事などを教えて下さった。

 ・5月のユスリカ
 それをお聞きし、昨年は5月下旬に阿寒へ訪れてみて信じられない状況を目の当たりにしたのである。噂では聞いていたものの、想像を遙かに超えた巨大なユスリカが窓ガラスに止まっていた。私が4月中に良く通っていた岐阜県の高原川でハッチするコカゲロウよりも大きいサイズである。#16から大きい物では#10サイズ、それを見て私は、「これ本当にユスリカですかア〜」と訪ねたほどである。あまりにも大きいために見れば見るほど笑えましたね。そしてヤイタイ島で大物がヒットしているとの情報に島へ上陸すると、湖の辺り一面に巨大なユスリカが浮遊し、林の中から「ウォンウォン」と羽音が聞こえてくる。

 空を見上げるとユスリカの大群で空が薄黒くなり、異様な状態であった。話では聞いていたものの実際に目の当たりにし、これほどまで多いとは思いもしなかったこの光景に、驚きを感じたほどであった。

湖岸のボートには、大量のユスリカが!

湖面がユスリカで被われている!

 

 

追筆 ____________________________________

ユスリカの事などを調べてみますと、面白いことが解りました。

阿寒湖にはユスリカが大発生する理由があるのです。

それは、

阿寒湖は、湖にリンなどを豊富に含んだ温泉水がわき出ていて、その温泉水と浅瀬が多いために光が湖底に届く場所が多く、適度な水温を保つために、そこには大量の珪藻類を育む環境があるからなのです。

光+リンなどの栄養素+適水温=珪藻類を育む

そういえば、蒲田川もそう!川に温泉が流れ込み、10度以上という適水温になっているために、川はコケだらけ。

ユスリカなど水生昆虫は、植物性のものを主食としていまして、珪藻類や樹木の腐敗した泥などです。

そこに豊富な餌と温泉による適水温があれば、最高の環境となり、大発生をするのです。

いろいろ調べていくと、アイスランドに阿寒湖と同様でマリモがある湖があります。

この湖、環境は阿寒湖そっくり。

浅瀬があり、温泉水がわき出て・・・・・・

その名は、バーヴィトン湖  アイスランドで4番目に大きく、「蚊の湖」を意味する湖

「蚊の湖」なのです!

同様の条件で大量にユスリカが発生し、真っ黒になった蚊柱が幾十にも重なり不思議な景色を作り出してしまうほど。

阿寒湖よりも巨大なマリモがあると言われていますが、ユスリカも阿寒湖の数倍はいる環境のようです。ただしここのユスリカは人を刺す種類もいて、近づきたくないですね。阿寒湖には刺す蚊はいなく、無害ですので安心です。

詳しくは バーヴィトン湖 

温泉水と光が届く浅瀬、そして適水温が、ユスリカの大発生を起こさせるのです。

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あちらこちらでライズ音が響き、あわててユスリカのドライフライをセットし、ライズに向かいキャストしてみる。すると、右に左に、次は手前に遠くにと、ライズは定位をせずにあちらこちらで行われ、モグラたたきゲームのような状態になってしまった。時折だがヒットはするものの、ライズの数からすると偶然とも思える確率のヒットに、我ながら情けなくなったことを覚えている。

 ドライフライのサイズ、カラーはマッチさせており、ティペットも7x迄細くしてもその効果は得られず、キャスティングの距離もタイミングもベストであるはずなのに・・・・・

この状態でドライフライを浮かべていても、ヒットするのは万が一の確率です。

 

・阿寒のアメマスはグルメ?
その後面白いように釣りました。私なりにその答えが出たからです。どうやら阿寒のアメマスはグルメのようです。

 

 お腹がすいていて捕食しまくっている状況ならば連続でライズを繰り返すために、そこにフライを落とせばスムーズにドライフライにヒットしてくれるであろうが、あまりにもユスリカが多いため、あわてることなくランダムに目に付いたもののみを捕食しているようである。しかもその中でユスリカの単体より捕食効率の良い集合体を選食していたのである。そうなればクラスター・パターンが有効になると思ったが、それも違うようであった。クラスター状態が五万とある状況では、単体よりは確率が良くなるであろうが、それもほぼ同じような結果となってしまうからだ。

 そこで考えられるのは、水面にこれだけ大量のユスリカが浮遊していると言うことは、その何倍ものピューパが水中にあり、それをメインに補食し、一部の鱒が水面を割ってライズしていることが考えられた。アメマスはグループで回遊している場合がほとんど。すなわち1つのライズの下にはいくつかのアメマスが居ることになる。そこで使用したフライが、スパークリング・スティルボーンである。

 

 ・爆釣フライの秘密
 ユスリカのピューパは、ハッチをするために水面に浮上するとき、脚を使い泳ぎ水面に到達するのではなく、シャックと本体の隙間にあるイマージングガスの浮力を利用し浮上を行う。そのガスは空気のようなもので、水と屈折率が違うために、ある一定の角度で表面が鏡面化し回りの景色を映し出す。

 トラウトウインドウ内は、光はもちろんのこと外界の景色を映し出し明るく見えているが、それ以外の所は、水の色もしくは湖底の色が水面に映し出され、直接光が目に入ってこない状況にある。そこにピューパがクネクネとボディを動かしながら真上から入ってきた光を反射すれば、薄暗いバックスクリーンの中で一点の閃光は目立ち、その輝きが捕食の鍵となっている。

 さらには湖面の波にもまれ水面下を浮遊するアダルトも、水面に近づく危険を冒すことなく捕食できることを考慮すると、フライのパターンはピューパのように光を反射しアダルトに近い形にする事が要求されてくる。そこで使用したのが、スパークリング・スティルボーンである。

 このフライは、ボディにモノフィラメントを巻き、水とモノフィラメントの屈折率の違いを利用し光を反射させる。ティンセルなどの金属的な反射は、常時ものを映し出してしまうが、屈折率の違いを利用すればある角度では光を反射し、また違う角度から見れば下地のスレッドの色をレンズのように拡大しカラーをアピ−ルする事が可能となる。さらにシマザキ・ドライシェイクを塗り撥水効果を高め、ウエイトを巻き込んでいるために空気の膜を抱いたまま強制的に沈下させてしまう。そしてアダルトのイメージとして、レッグが少々取り付けてあるパターンである。

 昨年もこのフライでかなり良い思いをさせてもらったが、今年の5月は阿寒湖が不調と言われつつもこのフライを使用しその絶大なる効果に満足の日々を過ごすことができた。ヒメマス、レインボー、アメマスと本当によく釣れました。

 

 エメラルドの新入社員(2001年)である[フライフィッシャーマン大平君]と一緒に釣りに行き、1キャストごとにヒットさせたこのフライの効果を、彼は目の当たりにしているので、エメラルドに宿泊の際は是非彼にその効果をお聴き下さい。(2009年現在彼は退社しました)

このフライはまだ未発表のパターンです。それは面白いように自分だけが釣れるからです。ガハハハ・・・・ここまで書いてしまった以上はマテリアル等をお教えいたします。

 

フック   TMC 2488
サイズ   #16〜14
スレッド ベネッキ・ウルトラファイン・スレッド、ダークブラウン
ボディ   0.8mmのレッドワイヤーをシャンクの長さに合わせカットし、両サイドにテーパーを付けカットする。シャンクの上に平行にしスレッドで巻き止める。モノフィラメントの1号をテール側にスレッドで止めながら密にスレッドを巻きボディの下地を作る。さらにその上にテール側より密にモノフィラメントを巻く。
レッグ   パートリッジ・グレイ・ハックルを巻きスレッドで巻き止める。レッグの本数は約10本です。

 

 全体的にぱらりとレッグがあるように心掛け余りはカットし完成です。なれれば所要時間5分で出来上がるはずです。あと大切なのは、釣り方です。ユスリカはカディスのように早く泳がないので、大きなリトリーブは禁物です。キャストしてからラインのスラックを取る程度の超スローリトリーブがベストです。ラインはフローティングを使用しクリーナーをしっかり塗ってください。フッキング率が良くなります。

 

是非一度おためし下さい。

 

 

このパターンは、阿寒湖ならずともユスリカが発生しているときにはかなり有効なのです。

この記事を書いた2001年以後、さらに進化し、このフライに巻き付けるモノフィラを、ナイロンからポリエステルに変えた方がより光り輝くために、今ではポリエステルラインを使用しています。

これは水と光の屈折率の違いが大きければ大きいほど光る位置ができることを応用したのです。

逆に、ティペットなどに使用するフロロカーボンは、ナイロンよりもその屈折率が水に近いので光りにくく、見えにくくなります。

ポリエステル・ラインと言っても、解らない方が多いと思いますので、紹介しますと、釣り糸のゴーセンから発売しているライン

ホンテロンは、ポリエステル・ラインです。

 

いろいろなことが関係していて突き詰めていくとフライは奥が深く面白いですね!

深く追求していけば、フィールドでの応用が利き、釣りは充実したものになります。

釣りには、感性も必要ですがやはり理論です。

 

 

著者 杉坂 研治